2008年1月22日火曜日

劇場


 劇場とは何という厖大な、ばかばかしい機構だろう。すべてが嘘いつわりに奉仕するために組み立てられた何という複雑なメカニズムだろう。そこでは微妙な距離の計算、音響の計算ですら、いつわりの或る精妙な効果のためになされている。
 私は劇場を見るたびに、芸術家の心の中の大きな真黒な空洞を見るような気がする。特に観客も俳優も家に帰ってしまったあとの舞台に立つと、そう感じる。
    <三島由紀夫>
〝空蝉〟

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