2010年11月30日火曜日

うさぎ追いし記憶


 そうだよ。ほら、真中に小さな茅葺の家が一軒ある。
 畑の中の道は、どこ通っても必ずわが家に帰るようになっている。
 双六だよ、おまえ。
 おまえは叱られて、風呂敷包みをもって、夕暮れになると、
 あの道を帰ってゆくんだ。
    <寺山修司、壁抜け男>

〝もうどの辺りを歩いているんだろう?帰るところは一緒だね。風呂敷包みの中は、帰りつくまで誰にも見せないでおいてください。そこには輝くひとつの星が入っているので、家の中で開ければ、あなたの心の時計の振り子になって、いつまでも鼓動するから。お大事に。また会いましょう〟

2010年11月29日月曜日

浄土冥福


住むに果てしなき王国があり、私どもがその王国にとこしえに住むことが出来るように、限りなき生命が与えられています。
    <天路歴程 ジョン・バニヤン>

〝うさぎ追い小鮒釣りしかの里のあの人の常しえの安らぎを祈り、観念の偽計を信じる仕草をする日が、今まさに過ぎようとしている〟

2010年11月28日日曜日

感動の法則


『ヴェネツィアに死す』の中でトーマス・マンは、ヴェネツィアへは、海から訪れるべきだと書いている。
ヴェネツィアの表玄関は海に面しているのである。
陸から汽車で着くのは、裏の通用門から入るということなのだ。
    <塩野七生>

〝感動をえるには感動をえる、その予定調和のような法則があるのだろう。素絹のような無垢の精神でその法則を受け入れなければ、感動をえる機会をおそらく見逃してしまうだろう。後悔は感動にふさわしくない〟

2010年11月27日土曜日

黄色への讃歌


思えば、私もいろんなものから逃げつづけてきたような気がする。
家から逃げ、母親から逃げ、故郷からも、学校からも逃げた。
    <寺山修司、旅の詩集>

〝そして迷い込んだ12月は、皇帝の日の光に照らしだされる暖かい月であって欲しい、と思う。ゴッホ展を観にいこうか。「そう、本当のところ、われわれに出来るのは絵に語らせることだけだ(フィンセント・ファン・ゴッホ)」。ゴッホが好んだ黄色はあらゆる色相のなかで、もっとも多く光を与える神愛の感動の色〟

2010年11月26日金曜日

自分なりの弾き方


演奏する時は、あなた自らが楽しまないといけません。
素直な気持ちを現すつもりで、自分なりの弾き方をすればいいのです。
    ≪渡辺貞夫≫
〝上手とか下手とかみじんも考えない。あくまで自然であることに美があるのです・・・。〟

2010年11月25日木曜日

マイアミ


マイアミの語源は、ある部族の言語で「甘い水」を意味することばに由来する、と考えられている。
〝マイアミのリトル・ハバナにあるスーパーマーケット裏に流れる水は甘くて哀しい〟

2010年11月24日水曜日

彼の音楽


彼の場合は、音楽が心象(イメージ)のかわりを果たしていたのだ。
自分のからださえ眼では認知できない。
だが、音楽によってはちゃんとわかっていた。
だからこそ、あのようにすいすいとからだが動いたのだ。
だが、いったん「内なる音楽」が止まってしまうと、彼はどうしていいか分からず、行動がパタリと止まってしまうのだった。
〝内なる音楽が聞こえなくなったものの悲哀〟