2009年3月31日火曜日

書物


 書物なんてものは、元来からっぽなものだ。
 大切なのは、書物ではなくて血だ。
 血を読まねばならぬ。
    <ライナー・マリア・リルケ、マルテの手記>
〝血を感じさせる書物を・・・〟

2009年3月30日月曜日

休息


 西方とは、太陽が一日の休息を求めて憩う場所であるが、仏法ではそれは極楽浄土のことであった。
    <新渡戸稲造、武士道>
〝奇しくも「・・・あった」。われわれは何処にも休息がないことを知っている〟

2009年3月29日日曜日

維新清廉


 廟堂に立ちて大政をなすは天道を行ふものなれば、いささかとも私を挟みては済まぬものなり。
 いかにも心を公平に操り、正道を踏み、広く賢人を選挙し、よくその職に任ふる人をあげて政柄を執らしむるは、即ち天意なり。それゆえ真に賢人と認る以上は、直ちに我が職を譲るほどならでは叶はぬものぞ。
    <西郷隆盛、遺訓>
〝平成の政治家はもう一度明治に還ったらよかろう〟

2009年3月26日木曜日

物想い


 ある人がいなくなるとは、なにがなくなることなのだろうか。
<ゲオルグ・ジンメル>
〝かって街の大通りを歩いていた100年前の人々はもはやいない。
  どこにいったのか、なぜいったのか〟

2009年3月25日水曜日

思想の矮小化


 最高の独裁者は、他の人間、聖なる寄生者・・・彼の父親・・・の名において命令し、自らがこうむった抽象的な暴力を他人にうけ売りする。
    <ジャン・ポール・サルトル>
〝教訓、個人的体験を思想にしないこと〟

2009年3月24日火曜日

光測


 私はいつも「真夜中のドライブ」の話をする。
 真っ暗闇で遠くは見えなくとも、ヘッドライトの光が届くところまで勇気を出していきましょう。
 それから先は、行った時点で考えましょう。
    <竹中文良、ジャパン・ウェルネス理事長>
〝光源はおのれ自ら〟

2009年3月23日月曜日

セネカ


 難事に際しては理性を活用するがよい。固いものは柔らかくされるし、狭い場所も広げられる。重いものでも巧く堪える人には、それほど重くはない。
 更にまた欲望は遠くに走らすべきではない。近くに出て行くことだけを許してやるがよい。なぜというに、欲望というものは完全に閉じ込められることには堪えられないからである。
 われわれは、行うことのできない、あるいは行うことの困難なことは棄てたうえ、近くにあってわれわれの期待をそそるようなものを追うのがよい。
    <セネカ、道徳論集>
〝あまりに実利的、妥協的ではないか、そしてネロの師セネカは夢想家ネロに殺された〟

2009年3月22日日曜日

耐える力


 人は相当の苦悩にも耐える力を持っているが、意味の喪失には耐えられない。
    <V・E・フランクル>
〝苦悩は身体的であるが意味の喪失は精神的である、でもこの二元論は正解か?〟

2009年3月21日土曜日

はぐれ者


 量子力学では、宇宙の中の個別のもの、たとえば電子のふるまいは、完全に決定することができない。決定できるのは、同じ条件で、沢山の電子を集めてきた時、それらの電子が統計的な意味でどのようにふるまいをするかということである。
    <茂木健一郎、脳のなかの文学>
〝はぐれ者が存在する宇宙規模の意味が、疑いもなくあるはずだ。〟

2009年3月20日金曜日

迷い道


 人間にあっては肉体はあくまで偶有的なものであって、精神こそがその実体をなすのであり、またそれに応じて、われわれの肉体的な感覚器官に開示されるこの自然界は仮象の世界であって、純粋な精神の洞察する超自然的(メタフォーシマッシュ)な世界こそが真の実在界だとみる考え方が、ヨーロッパ哲学の基本的な伝統をなしている。
    <理想 No.465>
〝この道は引き返した方が良さそうだ〟

2009年3月19日木曜日

愛とは


 愛ってそういうものなのです。
 誰かを抱きしめたい。
 誰かに抱きしめられたい。
 それだけのことなのです・・・・・・ね、きっと。
    <あさのあつこ、2009・3文藝春秋>
〝歴史は連綿とつづく・・・。〟

2009年3月18日水曜日


 私が歴史的現在に物を云えば
 嘲る嘲る 空と山とが
 
 瓦が一枚 はぐれました
    <中原中也、山羊の歌>
〝はぐれた瓦がただ一枚 いつまでも遠くをみつめています〟

2009年3月17日火曜日

生々流転


 道ばたに転がっている石ころも、
 実体としてみれば、流転している。
 昨日の風雨でいくらか削れたかもしれないし、宇宙線が衝突して、石を構成する原子に、いささかの変化が生じたかもしれない。
 千万、一億という年数を経れば、石ころもまた流転することは明白であろう。

 これに対して、生きものの生々流転は、石ころに比べたら、もっとはるかにはっきりしている。
 つまり生物では流転がむしろ本質に変わっているのである。
    <養老孟司、人間科学講義>
〝ふたたび、みたび、なにゆえの本質!?〟

2009年3月15日日曜日

現実とは


 文学とは、精神による現実批評である。
    <トーマス・マン>
〝もう少し深く、現実⇒精神の写し絵⇒漏れ出ずる具象⇒批評の網にかからぬ⇒どうする?〟

2009年3月14日土曜日

階梯


 おお世界よ! おお人生よ! 時よ!
 おん身の最後の階梯を私は登る。
 かってふまへてゐた階梯をかえりみをののきながら、
 いつの日、再びおん身の青春の栄光が帰ってくるであらう。
     もう来ない━、おお、もう二度と来ない!
 
 日々の生活から、
 喜びがとび去った、
 爽やかな春、夏、そして霜白い冬は、
 失意の心に悲哀をもってふれはするが、
 愉悦をもっては、
     もう来ない━、おお、もう二度と来ない!
    <パーシー・シェリー>
〝もういない、でも詩は残りいない君は満足しているか?〟
 

2009年3月12日木曜日

エロチスム


 エロチスムのふたつの運動。
 一方は自然との協和を求め、他方は自然を疑問に投入することを求める。
 私たちにはそのどちらをも消し去ることができない。
    <ジョルジュ・バタイユ、有罪者>
〝円環の左右にほかならない、いつもすぐ隣りにある〟

2009年3月11日水曜日

青い花


 われわれは歴史的現象にやどる偉大な単純な精神を直感することを要求しているのです。
    <ノヴァーリス、青い花>
〝それは直感するまでないただ一つの法則〟

2009年3月10日火曜日

思想


 天下の救済といった遠大な目標の前には、個人的努力がいかに無力であるかを思い知らされ、思想によって天下を教化する方針に転じたのだ。
    <墨子、魯問編>
〝春秋戦国から三千年が過ぎ思想は出尽くした、人は忘れやすい、問われるのは思想ではなく人なのだ〟

2009年3月9日月曜日

末世


漢高祖 「わがはいは馬上で天下を取った、詩だの書だのに用はないわ」
陸賈「馬上で天下を取っても、どうして馬上でそれが治められましょうか」
    <漢書・陸賈伝>
〝思考は常に分節点を用意している。しかし近時は何と分節点の無いくそみそ諸相報道の多いことか〟

2009年3月8日日曜日

第三の立場


 ディフェンスは、失敗を修正すればレベルは上げられる。
 だが、得点するには、修正でなく独創的なアイデアの展開が必要だ。
    <人を動かす神>
〝はたしてあなたの人生は?、それともただ観客席にいて試合に参加したこともなかった?〟

2009年3月7日土曜日

霊肉


 肉は霊に逆らい、霊は肉に逆らう。
   <ガラテヤ書五の十七>
〝霊は肉と消え、肉は霊と去る。逆いは束の間の近親憎悪〟

2009年3月6日金曜日

人の航路


 たとえばある人が港を出るやいなや激しい嵐に襲われて、あちらこちらへと押し流され、四方八方から荒れ狂う風向きの変化によって、同じ海域をぐるぐる引き回されていたのであれば、それをもって長い航海をしたとは考えられないであろう。この人は長く航海したのではなく、長く翻弄されたのである。
    <セネカ、道徳論集>
〝現代では人の航路は三次元的ではなかろうか、三つ目の次元軸は価値の共有されないイマジネーションの螺旋階梯。あなたもそれがどこに向かっているか知らない。〟

2009年3月5日木曜日

心を労する


 心を労する者は人を治め、力を労する者は人に治めらる。 
     <孟子> 
〝瑞穂の邦になんと心を労する政治家の欠けていることか。瑞穂の邦は治まっていない。〟 

2009年3月4日水曜日

真の識者とは


 アメリカのオバマ新大統領は就任演説で「大きな政府か小さな政府かは問題なのではない、市場が有効か有害かも問題なのではない、それが豊かな社会を作るかどうかが問題なのだ」と語った。
 アメリカの新時代の代表が個人と国家の間にある「社会」に重点を置きはじめたことに、注目すべきだ。

 私は人間の幸福はデジタルな論理からは生まれないと思い直している。
 マーケットメカニズムや金融工学のように体系化でき、全てが論理的に説明できる方法論からは、こぼれ落ちてしまうものがあまりにも多い。
 そのなかで一番大きな欠落は、社会へのまなざしだった。
 構造改革論者の急先鋒であった私の懺悔すべき点は、「社会」へのまなざしを欠いていたことに尽きる。
    <中谷巌、2009・3文藝春秋>
〝無責任な、あまりに無責任な。非人間的な、あまりに非人間的な。〟

2009年3月3日火曜日

狼の影


 屍のあるところには狼どもが集まるものだから、やがておまえたちのためにも一匹の狼が現れるだろう。
    <ヘルダーリン、全集3>
〝いつの世も羅生門あり、とうに終末を迎えた政治社会システム〟

2009年3月2日月曜日

地上の人間


 思慮深い地上の人間は、時間を利用することを時間から学ぶ。
 そして過ぎ去った季節によってその穀倉を満たし、現在の季節のために備えをしたなら、次にさらに注意して来るべき収穫のために再び種を播き、それによって来るべき時に新たにその穀倉を満たすことができるようにするのである。
    <セーレン・キルケゴール、著作集18>
〝そう、地上の人間は、だ。多くの人間は足が地から離れている。〟

2009年3月1日日曜日

言葉といふもの


 「さう言えば、まあ、さうだが、」と浦島はさらに櫻桃の酒を調合して飲み、「あのお方は、何かね、いつもあんなに無口なのかね。」
 「ええ、さうです。言葉といふものは、生きてゐる事の不安から、芽ばえて来たものぢゃないですかね。腐った土から赤い毒きのこが生えて出るやうに、生命の不安が言葉を醗酵させてゐるのぢゃないですか。よろこびの言葉もあるにはありますが、それにさへなほ、いやらしい工夫がほどこされてゐるぢゃありませんか。人間は、よろこびの中にさへ、不安を感じてゐるのでせうかね。人間の言葉はみんな工夫です。氣取ったものです。不安の無いところには、何もそんな、いやらしい工夫など必要ないでせう。私は乙姫が、ものを言ったのを聞いた事が無い。しかし、また、黙ってゐる人によくありがちの、皮裏の陽秋といふんですか、そんな胸中ひそかに辛辣の観察を行ふなんて事も、乙姫は決してなさらない。何も考へてやしないんです。ただああして幽かに笑って琴をかき鳴らしたり、またこの広間をふらふら歩きまはって、櫻桃の花びらを含んだりして遊んでゐます。実に、のんびりしたものです。」
    <太宰治、全集7>
〝life as a fugitive from death〟