2008年9月4日木曜日

ある断章・WIEN


  長すぎた春

 ひとこともことばを交わしたことはありません
 だけどお互いに好きでした
 帰校時、ぼくを待っていてくれました
 だが、ぼくは・・・・・・逃げてしまったのです
 恥ずかしかったのです
 それから互いに見つめあう日が
 続きました
 快い春でした
 しかし、その春はあまりにも長すぎたのでした
 あまりにも長すぎた春
 それゆえに
 夏の到るのを忘れ
 秋の実りをも放棄した
 もう二度と春は還ってこない
 巡ってこないのだ
 すべては失せた
 彼女の微笑みとともに
 すべては桜春のかおりに紛れて
 消えたのだ
 どこへ行ったのか
 彷徨い歩けどなんのうるところもない
 ひとり惜春の思いに浸り
 到来することのない春を求めて
 たたずむ
〝K1967〟

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