
ハンス・セリエというオーストリア生まれの医者がいます。
ストレス、ストレス症候群という言葉はセリエが作ったものです。
この人はウイーン生まれで、お父さんはオーストリアの貴族でした。
しかし第一次世界大戦が起こってオーストリア・ハンガリー帝国が分解してしまいます。
今の小さなオーストリアになってしまった。
セリエのお父さんは、先祖代々持っていた財産を失いました。
亡くなるときに息子に言った言葉が、「財産というのは自分の身についたものだけだ」です。
それはお金でもないし、先祖代々の土地でもない。戦争があればなくなってしまう。
しかし、もし財産というものがあるとしたら、それはお墓に持っていけるものだ、と。
<養老孟司、かけがえのないもの>
〝意識を持つ存在の財産は《記憶》のみなのかもしれない。しかもそれは時間に《風化》してしまっている。なんと儚いことか。さて、そうすると、意識を持たない存在は財産と呼びうるものを持つことはないのか。財産とは何ゆえにかくまで意識を持つ存在にまとわりつくのか。〟