2009年11月30日月曜日

大河


 私の詩のなかには
 いつも汽車が走っている
 だが私はその汽車に乗ったことがない
    <寺山修二、幸福論>
〝私の心のなかにはいつも大河が流れている、だが私はその大河の水にふれたことがない、若き日のサクラメントリバー〟

2009年11月29日日曜日

グライダー


 人間には、グライダー能力と飛行機能力とがある。
 
 現実には、グライダー能力が圧倒的で、飛行機能力はまるでなし、という“優秀”な人間がたくさんいることもたしかで、しかも、そういう人も“翔べる”という評価を受けているのである。
    <外山滋比古、思考の整理学>
〝言い得て妙だが、この短い人生、飛行機には乗せてもらうのが一番かもしれない、それも特上のファーストクラスに乗り高空から美しい大地を見下ろしつつ飛翔する、なんていうのはグライダー人間の証なのか? それとも飛行機であろうとすることに消耗したのか〟

2009年11月28日土曜日

ディアレクティック


 人間が種族保存上、有効に行動し生活する為に、自然は人間に、知性という道具を与えたのは確からしいが、己れの謎を解いて貰う為に与えたとは到底考えられぬ事である。
 従って、知性は、行為の正確を期するに充分なものだけを正確に理解する。
 物と物との関係には、いよいよ通暁するが、決して物の裡には這入らない。
 その様なことは無用の業でなければ狂気の沙汰だ。
 恐らく、存在と認識との間のディアレクティックは、永遠に空しいであろう。
    <小林秀雄、ランボウ>
〝もっと簡単なことばであたり前のことは云うべきであろう、生が与えられたままの生である限りにおいては生に難しいことは何もない、与えられた限りの生でなければ生はそもそも存立しない、与えられたままでないように見える生は生の落とした影にしかすぎない〟

2009年11月27日金曜日


 力は山を抜き気は世をおおう
 時に利あらずして騅ゆかず
 騅のゆかざるを如何すべき
 虞や虞やなんじを如何せん
    <項羽、紀元前秦末「垓下の歌」>
〝私は騅の脚を速めようとしている果たしてその結末はいかなるものに〟

2009年11月26日木曜日

普遍と特殊


 歴史はときに、突如一人の人物の中に自らを凝縮し、世界はその後、この人の指し示した方向に向かうといったことを好むものである。
 これらの偉大な個人においては、普遍と特殊、留まるものと動くものとが、一人の人格に集約されている。
 彼らは、国家や宗教や文化や社会危機を、体現する存在なのである。
    <ブルクハルト、世界史についての諸考察>
〝一人の人格ができる最高のパフォーマンスは普遍と特殊の結合であろう。自己主張はそのような性質を強く有する結合方式であるが、あなたの自己主張は歴史に好まれる域に達しているだろうか。明日はマイケル・ジャクソンの遺作放映の最終日。普遍と特殊の極めてストイックな美を体現した彼は歴史に好まれた人である〟

2009年11月25日水曜日

これあれ


 これがどうならうと、あれがどうならうと、
 そんなことはどうでもいいのだ。

 これがどういふことであらうと、それがどういふことであらうと、
 そんなことはなほさらどうだつていいのだ。

    <中原中也、盲目の秋>
〝これとあれのほかにあるものをじつとものおもふけふ〟

ヴァンダビルト


 ヴァンダビルト一族の富の大きさを示すものは、その鉄道王国の拠点であったグランドセントラル・ステイション。
 この駅の建物自体、世界最大の駅であり(中央コンコースの空間は10階建てのビルに相当)、グランドセントラルから5ブロックも離れたウォルドルフ・アストリア・ホテルは、地下に特別列車の到着ホームがあることで有名だが、それはもともとこのホテルが線路の上に建てられたから可能だった。
〝070592、特別な措置というものと人〟

2009年11月24日火曜日


 燃える火を見ると、一瞬一瞬ゆらめいたり、小さくなったり、大きくなったり、丸くなったりして定まった形を持たない。
 火の形によって小人と呼び、巨人と呼び、さまざまの名を与えることができる。
 しかも暗がりを明るくし、暖める力を持ち、力をえれば、燃え広がってすべてを焼きつくすこともある。
〝ある日の瞑想〟

2009年11月23日月曜日

落葉


 焚くほどは風がもてくる落葉かな
    <良寛、越後五合庵>
〝自足自然体、無〟

2009年11月22日日曜日

現実


 現実は人によって違う。

 脳がもっている大きな作用で私が非常に重要だと思っているのが、「現実とは何かということを決めてしまう性質」です。

 脳が現実を決定するということは、人によって現実は違うのだということを意味しています。

    <養老孟司、かけがえのないもの>

〝私たちは何一つ同じものをもたない、この道はわたしだけの道、あの道はあなただけの道、ふたつの道が厳密な意味では交差しあうこともない、交差しあったように感じたとしてもそれは現実を共有することにはならない、互いに出来ることはみずからの現実の揣摩推測作用によって相手を慮ることのみ、生命とはなんと孤独な存在なのか、何ものがいかなる理由があってこのような存在を生み出した、宇宙に生命が存在する理由はいったい何なのか、ガラス玉演戯なのか?〟

2009年11月21日土曜日

様式


 様式とは、人格が果たす役割の軽減であり、とぎすまされた個性のより広い一般性への置換にほかならない。
    <ゲオルグ・ジンメル、ジンメル・コレクション>
〝様式とはこころの逃げ場である〟

2009年11月20日金曜日


 変起らば、只それに応ずるのみ。
 何ぞ動揺すべきあらんや。
    <西郷隆盛、南洲遺訓>
〝変起こして只それに乗じるのみ。何ぞ安住すべきあらんや〟

2009年11月19日木曜日

若返り色


 何が一番効果的かといえば、ピンク色こそ若返りの色なのである。

 若返り色のピンクをさらに積極的に活用するものに、色彩呼吸法がある。
 ピンクの色彩呼吸法は、まずピンクの色を思い浮かべ、ピンクの空気を吸い込んでいるんだとイメージしながら空気を吸い込み、息をゆっくりと吐き出す。
 この深呼吸を二三回くり返す。目が覚めたときと寝る前、日中の都合のよいとき、一日計三回。ピンクの呼吸をしながら自分の肌はなめらかになると心に描く。
    <色の秘密、野村順一>
〝色はなぜ存在するようになったのか?〟

2009年11月18日水曜日


 芸術は息です。
 吐いたり吸ったりする空気の中に美の世界があるか否かがすべてを決定します。
 それが芸術家の生涯なのです。
    <澤田政廣、芸術の心を射抜く矢>
〝美は持続しない、持続すると思うとしたら美は読みかえられている、まさしく美は息なのである〟
 

2009年11月17日火曜日

思い出


 私はおまえと今一度、あの黄色い猟犬をつれ、故郷の上蔡の東門から出て、すばしっこい兎を追いたかったが、今はそれも詮ないことだ。
    <宰相李斯(紀元前208年次子宛於秦牢獄)、中国古代書簡集>
〝思い出が花咲いて押し寄せるこの頃〟

2009年11月16日月曜日


 人間の条件は、つねに本質よりも先に「生」そのものがあるのであって「はじめにことばありき」ではなく「はじめに声ありき」だったのである。
    <寺山修二、身捨つるほどの祖国はありや>
〝人間の本質は「生」であり本質よりも先に「生」があるのではない。しかしはじめに声ありきは諾なり。「生」としての人間には祖国なる観念はない。「生」を放擲して偽計の本質を求める人間には祖国がある。而してその祖国は「生」に史的苦難を与える祖国である。〟

2009年11月15日日曜日

あなた


 古来日本では、鬼を「モノ」と呼んだ。
 なぜ恐ろしい鬼が「モノ」なのかというと、縄文時代以来引き継がれたアニミズムと密接な関係があって、万物に精霊・神が宿るという信仰から、「モノ」は「物質」であるとともに、「神」と同義語になり、しかもアニミズムにおける神は、人々に恵みをもたらす反面、恐ろしい祟り(災害・天候異変も含まれる)をもたらしたから、神は鬼でもあったのだ。
    <関裕一、天孫降臨の謎>
〝迷妄に生きることはやめよう。短い人生ではないか。鬼もいない、神もいない。いるのはあなただけ。そしてあなたと袖触れ合う更なるあなただけ。さらにはその光景のなかであなたとあなたと袖触れ合う更なるあなたとを見守るモノのみ。モノは物でしかなくモノは恵みももたらさず祟りももたらさない。モノはモノのありようそのままにただひたすらに時の波頭に漂っている。人はそうしたモノを気まぐれに渉猟し歩く。
それらもろもろを彼岸と此岸の双方にあってしろしめすのは厳かなる時。
言ってみれば時こそが神であり鬼であり万物の主である。
あなたは時の前でひたすら無力をさらすことしかできない。
あなたはそのことを直視したくないがために鬼と神をつくり出す。〟

2009年11月14日土曜日

楽園


 孟子によれば、義とは、人が失われた楽園を再び手中にするために必ず通過しなければならぬ、直(すぐ)なる、狭い道である。
    <新渡戸稲造、武士道>
〝楽園はありますでしょうか?生命体に楽園はありますでしょうか?集合的生命体は疑似楽園を集落のために作り上げるがそこに存在するのは常に抽象的楽園でしかないのではないでしょうか。そしてさらには、抽象的楽園はごく一部の生命体によって具体的に簒奪されごく一部の生命体以外の生命体は抽象的楽園を抽象的に復唱するのみでその具体的生命を終えるのではないでしょうか。〟

2009年11月12日木曜日

破壊と排出


 秩序を保つために秩序を破壊しつづけなければならないこと、つまりシステムの内部に不可避的に蓄積するエントロピーに抗するには、先回りしてそれを壊し排出するしかない。
    <福岡伸一、生物と無生物のあいだ>
〝つまり人の死さえも絶対存在がエントロピーに抗するため仕組んだ壊し排出する作業であること。〟

2009年11月11日水曜日

三つ


 人間がメモなしで話せるのは、たいていは三つのことまでです。
 聞き手のほうも、頭の中でとりあえず整理して覚えられるのは三つまで。
 不思議なもので「三つあります」と言われると安心するのです。
    <池上彰、わかりやすく伝える技術>
〝一つ目で迷っている、いつ三つを知ることができるのだろう。でもどれもつまりは同じかもしれない。〟

2009年11月10日火曜日

社会


 人は社会に出て、年齢を重ねていくごとにエキセントリックなものや、溢れたエネルギーが削ぎ落とされていってしまう。
    <菊池凜子>
〝社会に出て深くなる人を見極めればもっと楽しい〟

2009年11月9日月曜日

一灯


 一灯をひっさげて、暗夜を行く。
 暗夜を憂うるなかれ、ただ一灯をたのめ。
    <西郷隆盛、南洲遺訓>
〝一灯をたのんで歩んでいる、しかし暗夜は長く厳しい。〟

2009年11月8日日曜日

固定した情報


 絶えず変化する「生きている」システムのなかで、どのようにして「固定した」情報が産出されるのか、その物質的機構とはなにか。問題はそこに尽きると思われる。
    <養老猛司、人間科学講義>
〝違う!もう一歩、問題を深堀りしなければならない。そこに尽きると思われる問題は、どのようにして「固定した」情報が産出されるのか、などではない。そこに尽きる問題は、人はなぜ「固定した」情報を産出するのか、ということである。固定とは無縁でただ代謝活動の中の流れうごめく存在でしかない、そんな存在の人が、なぜ固定した情報(らしきもの)を営々と産出しようとするのか?これこそが、そこに尽きる問題であろう。だれか解答する人はいないものか。〟

2009年11月7日土曜日

始まり


 どこから表現体は始まるか?
 どこから絵画は始まるのか?
    <ロラン・バルト、表徴の帝国>
〝声から、時から逃げる声から。それにしてもバルトを買いかぶりすぎた、凡。〟

2009年11月6日金曜日

阿弥陀如来


 阿弥陀さんに恋をすると、いつも阿弥陀さんが目に浮かんでくる。
 そうすると死ぬときには必ず阿弥陀さんが迎えにきて、極楽に連れていってくれる。
    <梅原猛、仏になろう>
〝何という貧弱な思想、すべて是れ妄想、そんな妄想に身を委ねては仏になれない。瞬間は永遠なり、人は瞬間なり、そして人は永遠なり。阿弥陀は人の妄想なり。宗教心を否定するものではない、自らの持つ瞬間の永遠がその自らの宗教心をもたらすものであって、その自らの宗教心は必然的に人に享有される宗教心であり、それこそが有史以来人の宗教心が追い求めてきた姿である、ということを理解しませんか。〟

2009年11月5日木曜日

イデエ


 私にとっての真理である真理を見出すこと、私がそのために生き努力しようと欲するイデエを見出すこと、それが必要なのである。
    <セーレン・キルケゴール>
〝私が見出すのは私であり真理ではない、真理は私を欺瞞する。時のみが真理だが時は私を真理から遠ざける。〟

2009年11月4日水曜日

バベルの塔


 一辺が91.5メートル、正方形
 90メートル以上の高さ
 頂上には、ベル・マルドゥク(バビロンの神)の神殿
 塔の下には6万平方メートルの庭
 7層からなる階段
 
 バベルの塔の、またの名は、エ・テメン・アン・キ「天と地の基礎の家」
    <失われた時への旅>
〝いまバベルの塔を打ち建てている、またの名は・・・。その大きさはアジアを超える、か?〟

2009年11月3日火曜日

内と外


 役所で私は外面の義務は果たしているが、内部の義務は果たしていない。
 果たされない内的義務はすべて不幸となって、私からもはや去ろうとしないのです。
    <フランツ・カフカ、カフカの日記「1911年3月28日」>
〝人の世界の約束事は単純で外面と内部の二分法は通用しない。つまりは二分法は自己欺瞞に通じる。すると見えてくるものは何か。一本の道。人に許されるのはその道を歩むか歩まないかであろう。あなたは?〟

2009年11月2日月曜日


 それはそれと美しいあなたの影にうっとりと見惚れていたのでございますよ。
 ところがあなたときたら足もとのご自分の影にはとんと無頓着なふうで、ちっとも目をやろうとはなさいませんでしたがね。はなはだ厚かましいお願いで恐縮ですが、いかがでしょう、あなたのその影をおゆずりいただくわけにはまいらないものでしょうか。
    <シャミッソー、影をなくした男>
〝あなたの美しい影に感謝を!きっと二人分の力がでます。〟

2009年11月1日日曜日

現世主義


 あるとき兄が私に質問を掛けて「お前はこれから先、何になる積りか」と言うから、私が答えて「左様さ、まず日本一の大金持になって思うさま金を使うてみようと思います」と言うと、兄が苦い顔して叱ったから、私が反問して「兄さんはどうなさる」と尋ねると、真面目に「死に至るまで孝悌忠信」とただ一言で、私は「ヘーイ」と言ったきりそのままになったことがある
    <福沢諭吉、福翁自伝>
〝現世主義が畢竟正解なのか。あなたはこれからどうなさる、迷える羊?〟