2008年11月30日日曜日


 人は何によって道を知るか。
 心によってである。
 心は何によってものを知るか。
 虚(すきま)、一(統一性)、そして静(静けさ)であることによってである。
 心はつねにものを蔵しているが、しかもいわゆる虚(すきま)がある。
 心はつねに両(多角的)であるが、しかもいわゆる一(統一性)がある。
 心はつねに動いているが、しかもいわゆる静(静けさ)がある。
    <荀子、解蔽編>
〝心はなぜに存する〟
 

2008年11月29日土曜日

メモリー交換


 アフリカのマサイ族は、人が死ぬとすぐにその名前を変えるという逃げ道を思いついた。
 これで、すべての禁止は元の名前とともに消え、新しい名前によって憚るところなく故人の話ができるというわけである。
    <ジークムント・フロイト、フロイト著作集3>
〝記憶の塗りかえ・電子ディバイス〟

2008年11月28日金曜日

知不知


 物事には知る必要がない、また知っていなければならない、ことがある。
 忘れてはならないことがあり、また忘れなくてはならないことがある。

 自分が人から憎まれていることは、知っていなくてはなりませんが、自分が人を憎んでいることは、知る必要がないことなのです。
 人が自分に恩徳を与えてくれたことは、忘れてはなりませんが、自分が人に恩徳を施したことは、忘れなくてはいけないのです。
    <漢書戦国策、魏下安釐王>
〝人であるために〟

2008年11月27日木曜日

後に来るもの


 学校や学校の学問が不十分なつぎはぎ細工だということは、承知していたが、私はその後に来るものを待っていた。これらの準備や杓子定規ののちに、純粋な精神的なもの、真実の疑う余地のない確かな学問の来ることを、私は予想していた。
 そこでこそ、歴史の暗い混乱、諸民族の戦い、一人一人の魂の中の不安な問題などの意味が分かるだろう、と思った。
    <ヘルマン・ヘッセ、郷愁>
〝待ちぼうけ〟

2008年11月26日水曜日

人の教育


 畜群の成員が人間の本質について特定の信仰をもつようにさせるのが、教育の問題である。
 教育は、まずこの信仰を作りあげ、そのつぎにこれにもとづいて「誠実性」を要求するのである。
    <フリードリッヒ・ニーチェ>
〝万物一如〟

2008年11月25日火曜日

操り糸


 われわれは王のもとにいるのではない。
 おのおのがみずからのあり方を求めるのがいい。
    <セネカ、書簡>
〝見えない糸に曳かれる〟

2008年11月24日月曜日

集まるゆえんのもの


 水が深ければ魚や亀はそこに集まり、木々が繁茂していれば鳥はそこに巣をつくり、多くの草が茂みをつくっていれば獣たちはそこに居つき、君主が賢人であれば豪傑たちはそこに慕いよる。だから聖王は、人物を集めることにつとめないで、集まるゆえんのものに努力を集中する。
    <呂氏春秋、仲春紀功名>
〝それにしてもなぜ集まるのだろう〟

2008年11月23日日曜日

良心


 誰がもっとも良く知っているかを調べなければならなかったのだ。
 誰がもっとも多く知っているかをではない。
 われわれは、ただ記憶をいっぱいにしようとだけ努力して、理解力と良心を空のままにしておく。
    <モンテーニュ、エセー>

2008年11月22日土曜日

知の水平線


 「私」というのは「現象」にすぎないということだ。
 自分が自分であることを、常に確認しなければならない。
 他人によって確認してもらうのだ。
〝そして何が見える?〟

2008年11月21日金曜日

根を下ろす


 どんな木から派生したにしても、人間はそこから自分を切り離して新しい根を大地に下ろし、自己を確立しなくてはならない。
〝切り離す痛みに耐えることができるか〟

2008年11月20日木曜日

地の遠大な意図


 水脈の無い所をいくら掘っても水が湧かないのと同じように、音楽の土壌の無い所には音楽の花は咲かない。
 バナナの木にアマリリスが咲かないのと同じに、イヌにネコは生まれない。
〝あらゆる事象に必然あり〟

2008年11月19日水曜日

公私


 「私を私にかえせ」。僕の云いたいことはこの一語につきる。
 ・・・。
 公私を必ず対立させる哲学そのものの中に、最初から、本来私的なものを私的なものとして扱う意図が欠けているのを見ることができはしまいか。
 私に対立させられている公そのものの在り方に、もともと民衆を陥し入れる罠がかくされているのである。
    <黒田三郎、民衆と詩人>
〝政治の跡を残さない政治、それが自然な政治である(老子)〟

2008年11月18日火曜日

不在


 不在ということは愛しているものにとって、最も確かな、最も効果的な、最も根強い、最も破壊しえない、最も忠実な現存ではないでせうか。
    <マルセル・プルースト、愉しみと日々>
〝そうかもしれないと思うようになった。歳のせいだ。〟

2008年11月17日月曜日

大統領


 得意淡然、失意泰然
 良いときも、悪いときも常に変わらず、自分自身で納得できる人間であり続けること。
〝納得のありようが揺れ動きつつ持ち時間が過ぎ行く〟

2008年11月16日日曜日


 虚なれば実の情を知り、静かなれば動の正を知る。
 物に先立って動くことなかれ、揺らぐものは定まらず、騒ぐものは静かならず。動けばもって観るべからざるを言うなり。
    <韓非子>
〝かくいう韓非子は始皇帝により刑死せらる〟

2008年11月15日土曜日


 何ものか一つにまとまったものがあって、天と地よりも以前に生まれている。
 静まりかえって音もなく、おぼろげでいて形もなく、何ものにも頼らずに独立して不変であり、どこまでもひろくへめぐって止まることがない。それは、この世界のすべてを生み出す母だといえよう。
 わたしはそのほんとうの名を知らないから、仮によびなをつけて「道」とよぶ。

 道というものは、まことにおぼろげで、とらえどころがない。
 おぼろげでとらえどころはないが、そのぼんやりとしたなかに何かの存在がある。
 やってくるのを前から迎えてみてもその先頭はみえず、さきへ行くのをあとからついていっても、その後ろ姿はみえない。
     <老子>
〝天道微昧、和光同塵〟

2008年11月14日金曜日

記憶


 記憶は、それは、現実であろうと、また眠りのうちの夢であろうと、その鮮やかさに変わりが無いならば、私にとって、同じような現実ではなかろうか。
    <太宰治、フォスフォレッセンス>
〝等質の眠り、等質の記憶〟

2008年11月13日木曜日


 既に、我と彼との別、是と非との分を知らぬ。
 眼は耳の如く、耳は鼻の如く、鼻は口の如く思われる。
    <中島敦、李陵>
〝定かなものは何もない except for death〟

2008年11月12日水曜日

食う


 おれはものを考えるようにはできてないんだ。
 食うようにできている。
    <ヘミングウェー、武器よさらば>
〝いつも食うことを考えているあたし〟

2008年11月11日火曜日

形式なき形式


 「実体のなかにあって、もっとも非実体的なるもの」とはグレングールドが音楽を定義するときの言葉であり、中世の神秘思想家の表現をもちいれば、これは形式なき形式(ノン・フォルマータ・セド・フォルマンス)にあたる。
〝心の界面の溶融〟

2008年11月10日月曜日

タイムマシン



 音楽は映画や小説と違って三分から五分で人を感動させられるし、何度でも聴ける。宗教にも国家にもスポーツにも音楽はあるし、昔の音楽を聴くと青春時代にすぐ戻れるという、タイムマシンのような力もある。
    <藤井フミヤ>
〝思考の対極にある体内電子が音楽にのって浮かれる〟

2008年11月9日日曜日

秘めやかな嘆き


 わたしはロンドンっ子だから、この街のことはわかっている。
 でも路上で暮らすには、別のロンドンを知る必要がある。
 金や食物がもらえる時間と場所を覚えなければ、生きていけない。
 日に日に金魚らしさを失い、世間に背を向けていく自分がわかる。
 一日中通行人にジロジロ見られているのに、声をかけるやつは一人もいない。
 これじゃ誰だって酔わずにはいられない。
 なぜわたしはここにいるのだろう。
〝彷徨える形而上学〟

2008年11月8日土曜日

言語


 彼らは他の人々のところで話すことを学び、自分を相手に話すことを学ばなかった。
    <キケロ、トォスクラヌム談論>
〝内面を耕す言語方術こそ人の最大の特質〟

2008年11月7日金曜日

見張り


 教育や宗教感情や家庭などは、堅固な見張りといえるかもしれませんが、しかし十六才の乙女をあざむきおおせることの出来るほど、周到な見張りなどある筈がありません。
 自然は、乙女の愛する男の声を借りて、初心(うぶ)に見えれば見えるだけにひとしお熱烈な恋の最初の囁きを伝えるのです。
    <デュマ・F、椿姫>
〝道〟

2008年11月6日木曜日

分子レベル


 肉体というものについて、私たちは自らの感覚として外界と隔てられた個物としての実体があるように感じている。しかし、分子のレベルではその実感はまったく担保されていない。
 私たち生命体は、たまたまそこに密度が高まっている分子のゆるい「淀み」でしかない。しかも、それは高速で入れ替わっている。この流れ自体が、「生きている」ということであり、常に分子を外部から与えないと、出ていく分子との収支が合わなくなる。
 秩序は守られるために絶え間なく壊されなければならない。
    <福岡伸一、生物と無生物のあいだ>
〝ひとはなぜ川の流れに魅せられるか〟

2008年11月5日水曜日

目覚めた化石



 自分が全く違う時代に目覚めた化石のように感じる。
〝心地よい皮膚感覚〟

2008年11月4日火曜日

古代エジプトの修辞法



地平線の彼方に去りました。⇒逝去の意
私は水の代わりにぶどう酒を飲んだ。⇒出世し裕福になった意

〝果たしてフランス人は裕福なのか?〟
〝アメリカは地平線の彼方に去ったのか?〟

2008年11月3日月曜日

いつか来た道



 パスカルは「人間の状態」を「神なき人間の悲惨」として、つまり「神の不在」あるいは「隠れたる神」ということを中心としてとらえ、そのような「人間の悲惨」に目をおおわずにこれを直視せよ、と激しくせまる。
〝大恐慌、いま再び人は神を求めるのか?〟

2008年11月2日日曜日

ノヴァーリス



 わたしは元来世界を生命化して考える傾向と能力を持っている。
    <ノヴァーリス>
〝世界は生命の入れ子劇場〟

2008年11月1日土曜日


 私はいつも水にはげしい愛着をもっていた。
 水のながめは、そうはっきりとした対象はなかったけれど、
 私を甘美な夢想に投げこむのだ。
    <ジャン・ジャック・ルソー、告白録>
〝水は行為しようとの意志をもたず、しかもすべてを成し遂げる〟