
エジプトでは死者のミイラをおさめた棺は橇にのせられ、親類縁者に曳かれて、ナイルの岸に到達する。そこで棺は舟にうつされナイル河を渡った対岸の沙漠の中にある墓地に到達するのであるが、それに照応して「死者の書」にはこう書かれている。
つまり死者が冥府に行くにはその途中に1つの大河があって、必ずこれを渡ることになっているが、それには冥府の渡し舟を招き寄せて、それに乗らねばならない。
<石上玄一郎、エジプトの死者の書>
〝古代エジプトのこの習俗は、永い年月を経てアジアの仏教に取りこまれ、三途の川の説話を生んだ。人の棲む東岸から人の棲まない沙漠の西岸に死者を運び葬ることは、日の入りのみならず衛生上の観点から、古代エジプトではどうしても必要なことだった。しかし三途の川の背後に潜む歴史の真実を、いまはだれも問わず、ただ過去の必然をいまの迷信に受けつぐ。かくして迷妄は意味もなく現実を支配する。〟
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