2009年1月31日土曜日

反復


 反復は実践的生活の特徴である。
 それは「可能性」を「現実」にすることを意味する。
 そこに意欲、行為、能動的把握━理想の実現がある。
 観念として内にあるものを行為に現わし、要求として心に迫るものを人格的に実現するのである。
 しかしこの実現は必ずしも外的行為に現わすという意味ではない。
 行為は肉体的運動を必須の条件とはしない。
 切実な心の生活が現実なのである。
 従って反復はまた自己の内に深く沈潜し鋭く集中することをも意味する。
 真の反復は永遠性である。
    <和辻哲郎、ゼェレン・キェルケゴオル>
〝永遠に連なる時間は反復しない、人は反復を唱えたがる〟

2009年1月30日金曜日


 世界は考えるものにとっては喜劇であるが、感じるものにとっては悲劇である。
    <ホラス・ウォルポール>
〝時に感じ時に考え、そして考えが感じの掌中から逃れられないことを知る〟

2009年1月29日木曜日

請求


 最も多く受けた人は最も多く請求されるであろう。
 助けを受けた事は、彼の特権であるから。
    <パスカル、パンセ>
〝他の特権をふるう人たちも、自らへの請求に応じる心を示して欲しい〟

2009年1月28日水曜日

咎める


 大衆が君に咎めだてするもの、それを大切に取っておかなければならないが、それは君なのだ。
    <ジャン・コクトー>
〝針のむしろに坐っていたくない〟

2009年1月27日火曜日

法則


 法則はすべて安泰な状態になければならない。
 そして人が法則をすべてこのように危険からの避難所に、海岸に置いたままにしたので、それは石と化してしまった。
 そしてその点にこそ、われわれが窮地に陥った原因があるのである。
 石でできた法則を持つという窮境の原因が。
    <ライナー・マリア・リルケ、ザムスコーラ>
〝法則は人間に先行する〟

2009年1月26日月曜日


 神と名づけられてきたのは、弱化し、弱さを教え、弱さを伝染させるものであった・・・。
 私は、「善人」とはデカダンスのひとつの自己肯定形式であることをみいだした。
    <フリードリッヒ・ニーチェ、権力への意志>
〝神を論じるニーチェにしても然り、己を論じて欲しい〟

2009年1月25日日曜日


 のみを振って木を切り、刻むということは、木を殺すということのように思われますが、そうではなくて本当は木を生かすことであると信じます。
 しかし、木を生かすことのむずかしさは、並大抵ではありません。
 技がとぼしければ、いかなる貴重な木材も、たちまちにして死んでしまいます。
 これを生かすものは、熟した “技” ですが、単に技のみではなく、さらには木を愛する心がなければなりません。
 このように技と心を一つにして、はじめて木を生かし、美しく造形させることができると思います。
    <澤田政廣、芸術の心を射抜く矢>
〝木の気持ちを聞いてみたい、人もそれぞれの気持ちを持つ、澤田の技と心がなければ言えない〟

2009年1月24日土曜日

結婚


 男は結婚してはならぬ。
 すべてを失うことになるのなら、すべてを失う立場に身を置いてはならぬ。
 失うことのできぬものを見つけるべきだ。
    <ヘミングウェイ、他国>
〝見つけた!でも波頭に浮かぶ蜃気楼・・・〟

2009年1月23日金曜日

真実の声


 人は身体の意志と認識との複合体である。
 身体の意志は地球と一体化し、宇宙に連なり、時に従属する。
 しかるに認識は時に抵抗しようとする。
 認識は知っている、時に従属する身体が土となれば認識は存在しえないことを。
 認識はひたすら身体を理解しようと欲し、身体を認識の求める永遠に近づけようとする。
 こうして人は身体の延長である、しかし身体より堅固な物で自らの周りをうずめる。
 物は時に抵抗すべく作られた。
 物は時を閉じこめるため確実な形をもつ必要がある。
 しかるに人も物も時に何らの苦しみも与えることはできない。
〝シジフォス〟

2009年1月21日水曜日

慣れ


 足かせをはめられた囚人は最初のうちは、両足にかかる重量や邪魔物にひどく苦しめられている。
 だが後になって、それらに憤ることを止めて我慢しようと腹を決める段になると、自然は雄々しく耐え忍ぶことを教え、習性は易々と耐え忍ぶことを教える。
    <セネカ、道徳論集>
〝目に見えてさえこうだ、まして目に見えないものは〟

2009年1月20日火曜日

真面目


 私は死ぬ前にたった一人で好いから、他を信用して死にたいと思っている。
 あなたは其のたった一人になれますか。
 なって呉れますか。
 あなたは腹の底から真面目ですか。
    <夏目漱石、心>
〝だれもいないので千年の仏像をみる〟

2009年1月19日月曜日


 「自分の城」を築こうとする者はかならず破滅する。
    <カール・ヤスパース>
〝城に閉じこもったのはヤスパースではないか?人の属性は一国一城の主になりたがるもの〟

2009年1月18日日曜日

知性


 「知ってるつもり!?」というタイトルのテレビ番組がありましたが、この表現を見るたびに、私は、いまの世の中で「知性」と呼ばれているものは、すべてこれ、すなわち「つもり」「そんな気がしているだけ」ではないかと思います。
    <姜尚中、悩む力> 
〝つもりや気のみで生きないと、現代の迷路のなかで身体が斃れてしまいそう〟

2009年1月17日土曜日

パティ・ページ


 夜中はラジオを切り、ペギー・リーのCDを聴く。
 独身のとき、失恋をすると、ペギー・リーの歌が妙に身にしみた。
 その独身が結婚して二人になり、三人になり、四人になったところで、オイルショックがきた。
 そして、いま、わが家はまた、二人に戻っている。
 当り前のことだが、妙な気もする。
    <小林信彦・2009年>
〝古き良きアメリカの歌姫、パティ・ページの歌も妙に身にしみませんか。パティ・ページの歌は、人が一人に戻ってゆくときのあらゆるものとの "別れの歌" 、に聞こえます。一人、二人、三人、四人、二人、そして一人・・・、人生。テネシー・ワルツをとても気に入っているわたしは、それを聴くと妙に身にしみます・・・。〟

2009年1月16日金曜日

デザイン


 デザインの使命とは「未来を先取りし、人の命を救うことだ」。
    <川崎和男・工業デザイナー>
〝地球は何のために、そしてだれのために生命体をデザインし、もてあそんでいるのだろう。あなたはその答えを知っていますか?〟

2009年1月15日木曜日

無言の行


 長い歴史を経た仏像は、私に静謐と穏やかな魂を感じさせてくれる。
 そこにことばはなく沈黙のなかで仏と対峙しつづけた仏師の姿を思う。
 生きることもまた、無言を保って行う修行ではないか。
 饒舌で自分を飾るのではなく、沈黙のなかでこそ、自らを磨き深めていくことができる。
 うわべだけのことばでは何の意味ももたぬ。
 無言のうちに会得するものこそ、真実の姿ではないだろうか。
    <彫刻家・澤田政廣、1984年>
〝時空の存在することをわすれる空間がそこにある、堂奥にたたずみ外光にあふれる窓外をみやっていたわたしの千年の記憶がよみがえる〟
 

2009年1月14日水曜日

思い出


 When lofty trees I see barren of leaves
 Which erst from heat did canopy the herd
 And summer's green all girded up in sheaves
 Borne on the bier with white and bristly beard
 Then of thy beauty do I question make

 そそり立つ木々の、かっては陰をなして牛たちを猛暑から
 守っていたのが、葉を散らせて枯れ枝となるのを見るとき、
 夏の青々とした草が、刈られて束にくくられ、
 台車から白枯れのひげをはみ出して運ばれるのを眺めるとき、
 そのような折、ぼくは美について想うのだ、
 よきもの、美しきものはすべて去っていくのだから
    <ウィリアム・シェイクスピア、ソネット集>
〝そしていま為すべきは〟

2009年1月13日火曜日

通奏低音


 出産する前は、自分が母親になる姿を想像できませんでした。
 けれど子供が生まれた瞬間から、親になれたという実感がありました。
 「母は強し」ってよく言いますけど、子供を生んでから私もどんどん強くなってる気がしますね。
    <矢田亜希子>
〝明らかな自然の意図があるのだろう、諧音となって脈々と年月を流れる通奏低音〟

2009年1月12日月曜日

後世の脚色


 何よりも辛いのは孤独だ、友なく、音楽なき孤独だ。
    <フリードリッヒ・ニーチェ、バーゼル大学古典文献学教授・
        年齢24歳・年俸三千フラン・1869年2月4日>
〝物事の背景を知り解釈することの重要性を思う。この独白はニーチェがバーゼル大学教授に招聘され赴任して日が浅い時期に吐いたものだ。後世の彼の思想的特性を何ら補強するものでない。つまり・・・、あなたも自らに生起した以外のことは何も本当のところ分かっていないの、かもしれない。あるいは・・・、自らに生起したことさえも。〟

2009年1月11日日曜日

デカルト


 わたしはデカルトを許すことができない。
 彼はその全哲学のなかで、できれば神なしにすませたいと思った。
 が、彼は世界に運動を与えるために、神にひとはじきをさせないわけにはいかなかった。
 それがすめば、もはや神には用なしだ。
    <パスカル、パンセ>
〝神とはひとえに “研ぎ澄まされた精神の願いの総集” でしかないのではないか?人はいかなる状態を神があるというのか?〟

2009年1月10日土曜日

警告1829年


 外面的で物質的なものだけが、機械によって支配されているのではない。
 いまや、内面的、精神的なものもまたそうなのだ。
 同じ習性はわれわれの行動様式ばかりでなく、思考や感情の様式までも規則づける。
 人は、手におけると同様、頭脳においても心臓においても機械になりつつある。
 そして、ある種の個人の努力、自然の力に信仰を失う。
 彼らが希望しそのために戦うのは、内面的な完成のためでなく、外面的な組み合わせや配置のため、制度や組織のため、つまりあらゆる「メカニズム」のためなのだ。すべての努力、すべての付属物、すべての意見が、「メカニズム」に変わり、機械の性格を帯びてしまう。
    <トマス・カーライル、時代の表徴・1829年>
〝もうメカニズムから離れてわたくしは“存在”できない、さらに未来の安寧を失うとしても・・・〟

2009年1月9日金曜日

過ぎ去る


 ダヴィデ王は《すべては過ぎ去る》と銘を刻んだ指輪を持っていました。
 悲しい時は、この言葉で楽しくなり、楽しい時には、逆に悲しくなるのです。
 
 すべてが過ぎ去り、人生も過ぎ去るものであるとすれば、
 何一つ必要ないわけですもの。
    <アントン・チェーホフ、チェーホフ全集10>
〝こころもからだも、かかわりも過ぎ去る・・・〟

2009年1月8日木曜日

回転


 吾人ノ眠ル間、吾人ノ働ク間、吾人ガ行尿送尿ノ裡ニ、地球ハ回転シツツアルナリ。
 吾人ノ知ラヌ間ニ回転シツツアルナリ。
 運命ノ車ハ之ト共ニ回転シツツアルナリ。
 知ラザル者ハ危シ。
 知ル者ハ運命ヲ形ツクルヲ得ン。
    <夏目漱石>
〝知るものの、逆らうあたわず車とともに回転している〟

2009年1月7日水曜日

チェーホフ


 女ってのはね、君、酔いどれ面でも、不貞でも、乱暴沙汰でも、老衰でも、すべて許してくれるけど、貧乏だけは許しちゃくれないからね。
 女にとっちゃ、貧乏はあらゆる悪よりもわるいんだよ。
    <アントン・チェーホフ、不幸>
〝チェーホフの作品は慈愛に満ちているが、恐妻家でもある・・・〟

2009年1月6日火曜日

女の愛


 女の愛のなかには、女が愛していない一切のものに対する、不公平と盲目とがある。
    <フリードリッヒ・ニーチェ、ツァラトウストラ>
〝愛とは差別化することである、宗教的愛とは差別化を厭う観念の情化である〟

2009年1月5日月曜日

くり返し


 ぼくはいつもあの子とバッハを聴く。
 ひとつの旋律が、くり返しくり返し、岸辺を洗う波のようにやってくる中で、ぼくはあの子を眺め、あの子の小さな胸の中の心配事をきく。
 そうしていると、ぼくは、次弟次弟に、時間とはただくり返しなのだということが信じられてくる。
 ぼくには過去などありはしない、ぼくに未来がないのと同じようにってね。
    <われら戦友たち、文芸春秋>
〝永遠の汀にあるのは岸辺を洗う波の音のみ〟

2009年1月4日日曜日

自我の証文


 私は神を信じていない。私自身を信ずることができないからだ。
 神を信ずるとはおのれを信ずることだ。
 神とは自我に対して与えられた保証にすぎぬ。
 絶対者に対して自我を与えておかなければ、
 私たちは絶対者を笑って了うであろう。
    <G.バタイユ、有罪者>
〝やわらかく生きよう、絶対者や神は思念のレンズの焦点にすぎない〟

2009年1月3日土曜日

陰謀


 手段によって目的が覆いかくされてしまうことが、あらゆる高度文化の主要な特徴のひとつであり、また主要な問題のひとつでもある。
    <ゲオルグ・ジンメル>
〝そそのかされ本質を見てはならぬ〟

2009年1月2日金曜日

啓示


 音楽は、一切の知恵、一切の哲学よりもさらに高い啓示である。
 私の音楽の意味をつかみ得た人は、他の人々がひきずっているあらゆる悲惨から脱却するに相違ない。
    <ベートーベン>
〝音楽は意味の衣裳の織り目を溶かしながらあらわれる〟

2009年1月1日木曜日

静かな想い


 When to the sessions of sweet silent thought
 I summon up remembrance of things past,
 I sigh the lack of many a thing I thought,
 And with old woes new wail my dear time's waste:

 静かな想いにさそわれて、私が心の奥深く
 過ぎ去ったことどもをあれこれ思い出していると、
 かって求めたものが数多く見当たらないのに、ため息が出てくる、
 昔の苦悩が今さらのように蘇り、時の空しさが身にしみてくる。
    <ウィリアム・シェイクスピア>
〝元旦、そして遙かなる旅路〟