
ヒトは二種類の情報世界を生きている。
一つは脳とその情報の世界あるいは意識的な世界であり、
もう一つは細胞と遺伝子の世界、つまりほぼ完全に無意識の世界である。
換言すれば、脳の世界はいわゆる心や精神の世界、社会や文化の世界であり、細胞と遺伝子の世界は身体の世界である。
<養老孟司、人間科学講義>
〝心は脳の世界なのか?
二種類は誤りで ヒトは三種類の情報世界を生きているのではないか。
三つ目は心の世界。
脳と身体の情報世界が(他者にも影響され)相互干渉する臨界点のみで営まれる第三の情報世界、心の世界。
ヒトはおそらくこの第三の世界の存在を永らく無視しようと努めてきた。
その内容を読み取れなかったからだ、余りに不安定に見えたからだ。
とても心地よくもあるが、そのくせ名状しがたい不安感を与えるものでもあったからだ。
いまヒトは構造主義的事物認識を追求した結果として、その対極にあるのではとさえ思える≪ゆらぎ≫を重視し、それと真正面から対峙しようとしている。
その先に見える情報世界が≪心の世界≫なのではないか。
第三の世界、あるいはそもそもはヒトの第一世界であるべき世界。
その世界はいつも≪ゆらぎ≫の奥にあってヒトの近づきを待っている。〟